時代劇を前に見えてきた『暴君のシェフ』の俳優、イ・チェミンの転換期 (2-1)
(アイキャッチ画像出典 : https://varoent.co.kr/chaemin)
数日前、『愛する盗賊さま』の制作発表会を見ていたときのことです。
”2026年には大作の時代劇・史劇が数多く予定されていますが、その中でどんな作品として記憶されたいですか?” 記者から監督に質問がありました。

その言葉を聞くと「今年も時代劇が楽しみな一年になりそうだな」と期待が膨らみました。
そして、昨年観た時代劇の数々が自然と頭に浮かび、その流れの中で、ムン・サンミンさん、イジェウクさんと共にある俳優の顔がはっきりと浮かびました。
俳優のイ・チェミンさんです。

https://tvn.cjenm.com/ko/Bon-appetit-Your-Majesty/poster/
この記事では、俳優イ・チェミンを初めて知った人に向けて、『暴君のシェフ』『キャッシャロ』を軸に、彼の演技がどう変化していったのかを整理して紹介します。
現代劇に少し疲れていた時期、時代劇で取り戻した“観る楽しさ”
『ダイナマイト・キス』のレビューでも少し触れましたが、似たような構成のドラマが続くと、いつの間にかドラマそのものに飽きてしまう時期がありました。
そんな時に、昨年しばらくどっぷりと時代劇にハマっていたんです。
その頃に観たのが『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生』『シュルプ』『タンゴム』『還魂シリーズ1・2』『赤い袖先』『禁婚令-朝鮮婚姻禁止令-』などの時代劇。
時代劇は、意外と歴史の勉強にもなりますし、同じ史実でもまったく違う視点で描かれるところが魅力ですよね。
時代劇は話が入り組んでいたり、とにかく長くて最後まで見るのが結構大変と感じることが多いのですが、その中でも比較的気負わず最後まで観られた作品が、去年大人気を集めた『暴君のシェフ』でした。

「燕山君」を美食家に?『暴君のシェフ』の新鮮さ
燕山(ヨンサン)君といえば、朝鮮史に名を残す暴君。
これまで数えきれないほどドラマ化され、その多くで狂気に満ち、血の気の多い人物として描かれてきました。
ところが『暴君のシェフ』では、その燕山君を“美食家”として描いています。
この設定がとても新鮮で、この役を演じたイ・チェミンさんを「主役級の俳優としてしっかり認識した」作品でもありました。
“出演作が続いた俳優”を過去の作品でたどるということ
ドラマを見ていると、ある時期にやたらと目にする俳優がいますよね。
昨年特に“多作”だったのは、チュ・ヨンウさん、イ・ジュニョンさん、カン・ハヌルさんなど。
各自出演本数は5~6作と、見ても驚くほどです。
そうなると私は自然と、どんな作品に出てたんだろうと過去作を探したくなるのですが、チュ・ヨンウさんやイ・ジュニョンさんの過去作は、私自身ほとんど観ていなかったので、普通に一作ずつ確認していく感覚でした。
でも、イ・チェミンさんは少し違いました。
私がドラマを観る中で密かに好きなのが、「この作品観たはずなのに、その俳優だと気づかなかった瞬間」なのですが、イ・チェミンさんは、まさにそんなタイプの俳優だったんです。
偶然観た『バニーとお兄さんたち』
昨年、何気なく観た『バニーとお兄さんたち』。
イ・チェミンさんは、ヒロインを囲む4人の男性の中で最終的にヒロインと結ばれる役として登場します。
次世代の主演候補も多く出演していた作品で、その中でもなぜか印象に残っていました。
ただ、作品自体は視聴率的に注目されることは少なく、当時の印象は「どこかで見たことのある新人俳優」程度。
ところが、その後に放送されたファンタジー時代劇『暴君のシェフ』で、その印象が一変しました。
2021年『ハイクラス』でデビューした、7年目の俳優、イ・チェミンさん。
一度しっかり彼の過去の作品を整理してみたいと思わせてくれました。
『暴君のシェフ』で見せてくれた物語を引き戻す演技
『キング・ザ・ランド』で大きな人気を得たユナとジュノ。
昨年その二人が続けて主演した作品に、イ・チェミンさんが相手役として登場します。
私の記憶では、『キャッシャロ』を先に撮影し、その後『暴君のシェフ』に入ったはずです。
『暴君のシェフ』は当初、『ザ・グローリー』『涙の女王』で強烈な悪役を演じたパク・ソンフンの出演が決まっていました。
しかし撮影直前で状況が変わり、制作陣は大きな決断を迫られたはずです。
巨額の投資がかかった作品で、燕山君という軸となる人物を、短期間で新たに探さなければならなかったのですから。
イ・チェミンさんが『キャッシャロ』を終え、悪役への手応えを掴んでいた時期だったのかもしれません。
ユナより10歳年下、時代劇は初挑戦、これまで強烈な悪役イメージもなかった俳優。
正直、不安がなかったと言えば嘘になります。
けれど結果として、ユナの料理人としての演技力や発声が素晴らしかったのと同時に、イ・チェミンさんもまた、このドラマをしっかりと引っ張っていて俳優さんだった感じました。
『暴君のシェフ』は、母を失い、人としての情が空洞になった大君が“食欲”という原始的な欲望に執着する物語。

https://tvn.cjenm.com/ko/Bon-appetit-Your-Majesty/photo/
設定自体が新鮮で、現代から来たフレンチシェフ・ヨンジヨン(ユナ)と出会い、完全な暴君にならずに済むという希望のある構造も印象的でした。
ただ、7〜9話の料理対決パートはやや冗長で、突然の中国語進行が没入感を削ぐ場面もありました。
それでも観続けられたのは、俳優たちの演技、特にイ・チェミンさんの存在感です。
後半に向かうにつれ、コメディから復讐劇へとトーンが変わり、暴君になるか否かの分岐点で見せる涙と怒り、ユナに想いを告げる眼差しが、視聴者を引き戻します。
12話、ヨンジヨンが現代へ戻る場面。
演出やVFX(ヴィジュアルエフェクト)は正直やや長く、視聴者としては違和感もありましたが、存在しない相手に向かって長時間号泣する演技は圧巻でした。

https://tvn.cjenm.com/ko/Bon-appetit-Your-Majesty/video/

https://www.youtube.com/watch?v=N2jJ5t0vqY8
メイキング映像を見ても、その没入度の高さがよく伝わってきます。
(韓国語が理解できる方はイ・チェミンさんが解いてくれるLee Chae Min Weverse Liveをぜひ観てみてください!)
時代劇初挑戦とは思えない剣戟、感情表現、細かな表情。
ユナという大先輩と並んでも、決して埋もれない中心軸。
出演が急に決まっていたのにも関わらず、彼がどれほど準備されていた俳優かを証明した作品だったと思います。
『キャッシャロ』ー 静かに黒く染まる顔
『暴君のシェフ』で共演したカン・ハンナさんと対立する兄妹として共に出演した『キャッシャロ』。
今回は静かに“黒化”した悪役でした。
主演なのに初登場は4話。
待たされた分、その一瞬で空気が変わります。
普通の台詞なのに、表情ひとつで不穏さを漂わせる。
笑っていても、それは微笑みではなく、どこか嘲笑に見える顔。

8話で超能力を得る過程の身体演技は、「どうやって演じたんだろう」と思うほどリアルでした。
学園ロマンスで見せていた爽やかさや少し頼りない笑顔とは、まったく別の顔でびっくり。
この作品を観ると、『暴君のシェフ』で彼が選ばれた理由が腑に落ちます。
俳優 イ・チェミンの転換点
初期のフィルモグラフィーが学生役や青春ロマンスに偏っていたとすれば、『暴君のシェフ』と『キャッシャロ』は、明らかに演技の幅を広げた転換点でした。
『暴君のシェフ』放送後、30本以上の台本が届いたという話も、決して無理はないという感じです。
今後は、ナ・ヨンソクPDとNetflixが手がける登山バラエティー『一体なぜ登山なんかするの?』の出演が決まっていて、俳優としてはなく、1人の人間としての素顔を見ることも期待できそう。
また、2月には故キム・セロンさんと出演した青春ロマンス映画『私たちは毎日毎日』の公開も予定されています。
だからこそ、その前に観ていたのに記憶に残らなかった場面、通り過ぎてしまった役を改めて見返すと、今のイ・チェミンさんが、さらに見えてくるのではないかと思います。
主役として知られる前の姿を辿ることで、彼がどこから、ここまで来たのかがはっきり見えてくる。
俳優イ・チェミンさんの話は、次の記事でまだ続きます。

※本記事内の画像は、各作品の公式サイト・公式SNSよりお借りしています。
