親愛なるX – 8話までの感想と分析、レビュー
現在ディズニープラスで独占配信中の韓国ドラマ「親愛なるX」。
今年出てきたたくさんのドラマの中で、『親愛なるX』は本当に何の期待もせずに再生ボタンを押した作品でした。でも、見始めた瞬間からまるでブラックホールのように一気に引き込まれてしまったんです。ここ2年、あまりアップデートをしてなかったブログに私を戻させた凄さ。
そんな親愛なるXの1話から8話までのあらすじと感想、今後の予想を話してみたいと思います。
スポありなので、詳細は知りたくない、という方はスキップしてください!
1. 気づいたら止まらなくなった没入感
普段はドラマを見る前に、出演している俳優さんやあらすじをちょっと調べて「今回はここが楽しみだな」と思って見るタイプなんですけど、今回はただ「キム・ユジョン」と「キム・ドフン」をなんとなく知っているくらいの状態でした。運動をしてたら退屈でなんとなく再生しただけだったんです。
キム・ユジョンさんは、私の中では『太陽を抱く月』の子役としての演技や、『二十一世紀少女』で見せた、幼くてふわっとした初恋のイメージが強く明るいイメージだけが残っている俳優さんです。
キム・ドフンさんは『ムービング』で、静かな超能力を持つ優等生役を自然に演じていて、「演技の幅が広そう」と思わせてくれた俳優さんでした。
一方で「キム・ヨンデ」さんは、彼が出ているドラマをたくさん見ていたはずなのに、正直一度も見覚えがない俳優さんでした。後で分かったことですが、特別出演や助演で何度も見ていたのに、作品によって彼の雰囲気があまりにも違っていて、同じ人だと思っていなかったみたいです。
彼がよく知られるようになったのは『ペントハウス』のようですが、私はSKYキャッスル+不倫ドロドロみたいな雰囲気の作品があまり得意ではなく、正直見る気になれなかったんです。だから私にとって『親愛なるX』は、キム・ヨンデさんを改めて知るきっかけになった作品になりました。
暗い雰囲気の作品は普段ほとんど飛ばしてしまう私が、気づいたら4話まで一気に見てしまっていて、自分でも驚きました。
2. アジンは悪人なのか、被害者なのか
先週まで放送された8話まで見て感じたのは、アジン、ジュンソ、ジェオという3人の主人公だけじゃなく、アジンと関わる周りの人物まで、全ての登場人物が強烈な印象を残していくというところです。
また、主人公3人の感情線は複雑に絡み合っていて、その小さな揺れまで見逃したくなくなるようなストーリーと演技に引っ張られてしまいます。
ドラマの最初にアジンは“ソシオパス傾向のある子”として紹介されます。でも不思議なことに、見ていると彼女に対して「理解できる…」「かわいそうだ…」という気持ちが同時に湧いてくるんです。
人を巧みに利用したり、状況を計算したり、ときには残酷な選択さえもためらわないのに、「本当に彼女は悪人なの?」と問いかけたくなる仕掛けが沢山あり、見る人のモラルまで試してしまう。
アジンが最初に見せた「人間離れした選択」は、階段から落とされ助けを求めた母親を助けなかった場面でしょうか。
でも、幼い頃から実母に酷い扱いを受け続けてきた彼女にとって、その瞬間の判断は本当に絶対悪だったと批判できるのか。
幼い娘頃から外見をお金儲けに利用しようと企み、成長してからもアジンに会うたびに殴ってお金を奪う父親。
そしてそれを黙認しつつ、アジンが自分がバレたくない秘密をジュンソに漏らしたという理由で、幼いアジンを痛めつけた継母。
その光景を見ていると、誰でも「この子を助けたい」と思ってしまうし、アジンが鋭く大人を出し抜く姿に、むしろ当然だとすら思えてきます。
彼女のターゲットとなる最初のXたちも同じ。
生活が苦しいはずなのに優等生として認められるアジンが気に食わず、両親を使ってアジンの道を奪おうとした同級生。
単なる嫉妬心からアジンにひどい行動を取る先輩女優。
そういった状況から抜け出したい、仕返ししたい思うのは、本当に異常なのか?と納得させられてしまいます。
ドラマの中のある授業で先生が性悪説について説明しながら「人間は本来悪に傾きやすい性質を持っているからといって、ずっと悪く生きていくわけじゃない」と話すシーンがありますが、背景でふっと流れるその言葉が、続く回でもずっと頭のどこかに残り続けるような感じがしました。
3. ジェオとジュンソ – アジンを守る献身的な支え手
アジンを中心に描かれるジェオとジュンソの感情線は対照的な感じで描かれています。
ジェオ – 言葉のいらない中
ジェオは自分の傷ゆえに、アジンとより深い部分で似ている人だと思います。
彼も父親から暴力を受け、極端な状況で弟を守らなければならなかった過去があり、その絶望感が彼の人生を支配してきました。
そんな自分を「私はあなたを理解してる」と言ってくれた唯一の存在がアジンでした。
だから彼は唯一彼女を絶対に判断しない、責めない。むしろ何をしてでも自分を理解してくれた彼女の役に立ちたい、必要とされたいと願ってアジンの側に立ち続けるのがジェオです。
彼もアジンに男女の愛という感情を感じていると確認できる場面はいくつかありますが、彼はアジンを同格として見ているというよりは近づきたい存在、それことアイドルのような存在だと感じている感じがします。
ジュンソ – 愛着と罪悪感が微妙にねじれた関係
ジュンソは幼い頃からずっとアジンを見てきた人です。
お金目当てに彼を育てる母親(アジンのとは違い、苦しい時にそばにいてくれたアジンと時間を重ねながら絆を築いてきた唯一無にの存在。ジュンソはアジンが「私が隣においた初めての人だから」というほど特別な存在でもあります。
ただ幼い頃、ジュンソの母親がアジンの頭を浴槽に押しつけたあの日の記憶は、今でもジュンソのトラウマになっていて、何もできなかった自分に大きな罪意識を持っています。
「どうして僕はこんな悪い子を好きになってしまったんだろう…」
というほど、ジュンソは状況を理性的に見ながらもアジンが「ジュンソ、助けて」と言うたび、抵抗できなくなってしまう、「僕は無条件に君の味方だよ。絶対に手を離さないから。」そう言いながら、アジンに“普通の生活”を送らせてあげたいと信じ続けているんです。
ただジュンソは、裕福で“普通”の世界で守られながら育った子だからこそ、アジンの持つ深い闇や痛みを理解しきれない。彼女が悪いことをしないで欲しいと切実に願い続けている、それをアジンは彼の善良さに縛られてたくないがために彼を騙したり離したりして、2人は複雑で緊張感に満ちた中になっていきます。
アジンは二人をどう見ていたのか?
二人に対するアジンの感情は一体なんだったのでしょう?
ジェオはアジンが笑って、少し人間らしくなれる相手だと感じていたのかもしれません。ただあくまでも少し上からの目線で指示を出して自分の全てを理解して指示してくれるジェオも利用しています。
ジュンソに対しては自分の前では無防備になり崩れていく彼の姿を見て、アジン自身も寄りかかるように見える瞬間があります。
でも、ドラマ全体を見ていると、アジンは相手の欲望や感情を驚くほど正確に読み取り、それぞれの違いを利用しているのが良く見えてきます。
幼い頃から、母親の死を事故に見せかける父の姿や、自分を物のように扱う大人たちの中で育った彼女は、人間の感情を“感じる”よりも“読み取り、利用する”ことでしか生き残れなかったのかもしれません。
果たしてジュンソやジェオの愛に彼女が応えることはあり得るのか、このドラマが破滅の愛の物語と紹介されていることもあり、そんな結末は期待しない方がいいですね。。。
4. 何度も見てしまう破局の始まり、4話
高校生の時、刑務所に入った父親と離れ一人暮らしをしていたアジンに、出所したアジンの父親が突然現れたとき、ジュンソはこう言います。
「心配しなくていいよ。僕が全部どうにかする。もう昔みたいに何もできないままにはさせない。」
幼い頃、母親がアジンに暴力をふるう姿を見ていながら何もできなかった自分を責め続けてきたジュンソは、どこか“彼女を守らなきゃ”という執着にも似た感情を抱いているように見えます。
でも、直接的な暴力を受けたことがないジュンソには、“親という呪いがどれだけしつこく人生に付きまとうのか”をアジンほど想像できていなかったのかもしれません。
アジンは
「あなたには分からない。私みたいに生きてきたわけじゃないから… 絶対に分からない。あなたのその優しさがね、いつも私を危険にさらすの。」
一方アジンは、ジェオが弟守るために父親に対抗した時、
「一生あなたの足を引っ張る鎖が切れたんだよ。あなたは加害者になる前に被害者だったんだから。」
この一言が、アジンとジュンソの価値観の決定的な違いを象徴している気がします。
そして迎えた高校卒業式の日。
アジンは偶然 “初めての『良い大人』”に出会います。
どうしても暴力と搾取を続ける親という鎖を断ち切りたかったアジンは、ついに戻れない一線を越えてしまいます。
その「良い大人」を利用し、危険な状況へと追い込み、父親に向けての復讐をしてしまします。
アジンが疑われると、ジュンソは彼女を守ろうとして「僕がやりました」と嘘の自白までして。自分の人生すら差し出してしまうほど、彼はアジンを救おうとしていたんです。
しかし、結果的にアジンはジュンソから離れていくことになり、このあたりから彼女はゆっくりと…でも確実に、破滅の道へと進んでいくように見えました。
4話の様々なシーンの色合いと構図、音楽は本当に人を見る人を引き込む力があると思いますし、後の展開にアジンとジュンソの関係の根本的なベースとなる2人の会話が見どころでした。
5. 再会した3人の友人、より深い破滅へ
4話以降、ジュンソの中には罪悪感と疑問が少しずつ積み重なっていきます。
そしてアジンが芸能界で注目され始め、再び3人が再会すると…
5〜6話で、アジンは先輩の嫉妬を受け、大きなトラブルに巻き込まれてしまいます。
彼女はジュンソに再び助けを求め、ジェオもまた彼女を守ろうと動き始めます。
ただ芸能界でのアジンは、もう“普通の復讐”ではないのが以前とは違うところ。
アジンは自分を苦しめる先輩を暴露し、その後さらに上に行くために、すでに地位のある俳優・インガンを利用することを決めます。
そして、ついにインガンと恋人中になると、インガンの祖母が「あなたを家族のように大切に思っている」という優しさを見せても、アジンはその優しさが怖いのか、戸惑っているような表情を見せながらも、彼女の中で何かは少し変わってるのかもしれないという瞬間もありました。
しかし祖母が事故で亡くなり、わずかに「普通の人生を送れるかもしれない」と期待していた自分を嘲笑うかのように、アジンはまた心の扉を閉ざしてしまいます。
インガンが絶望し、悲劇的な選択をしてしまっても、アジンの言葉はどこか空虚で冷たく、「これは私のせいじゃない」といい、ジュンソを責めるように言う姿には、“感情”というものが彼女からどんどん遠ざかっているように見えました。
一方、祖母の死とアジンの関係があると疑っていたジュンソはアジンは何もしてないと分かり、ジュンソの中に罪悪感と後悔が戻ってきます。
「私を責めることは、過去のあなたを責めることになるんだよ。あなたがどれだけ私を責めても、私はあなたを責めたりしない。もし私から離れたいなら、それでもいい。昔のあなたがそうしたように、私を置いて逃げてもいい」
と言っていたアジンのことを考えながらジュンソは罪悪感、希望、諦められない気持ちで苦しみます。
その揺れが、私にも痛いほど伝わってきました。
6. アジンに迫る1人の男、 そして残り4話への期待
4話までは、ジュンソもジェオも、“どんなことがあってもアジンの味方でいる”という揺るぎない姿勢に見えました。
でもジュンソは4話である事件を経験し、アジンと距離を置く中で、少しずつ“自分なりの判断基準”が芽生え始めていきます。5〜8話では、アジンとジュンソの間にある「善と悪」のラインがはっきりと見え始めるそんな展開が続きます。
アジンはこう言います。
「それは私のせいじゃないよ。だってジュンソ、あなたは私が子どものとき、何もしてくれなかったじゃない。」
ジュンソに罪悪感を植えつけ続けるその言葉。
だけど、アジンをこんなふうにしてしまったのは、一体誰だったのか。
私たちがもし彼女と同じ幼少期を過ごしていたら、どんな選択をして、どんな人生を生きていただろう?
誰かに深く傷つけられたとき、「同じ痛みを返したい」と思うのは確かに自然な感情です。
でも多くの人がその線を越えないのは、“自分が受けた痛みを知っているから”なのかもしれません。
アジンが復讐のために利用した人々は、実は彼女を救うことができた人たちだったのかもしれない。
ジョンホの言葉のように、アジンがまだ少し小さい時に「たった一人でも“良い大人”がいれば」彼女は変われたのでしょうか。
残されたジュンソとアジンの関係は、どこまで切れて、どこでまた繋がるのか。
またアジンを追っている謎の男はこれからアジンとどのような関係を作っていくのか(原作ではアジンが財閥3世である彼と結婚をしようとするが彼はアジンよりも怖い人だったという設定です)。果たしてインガンの死は誰によるものだったのか。
ドラマの長さが原作より長くなるため、よりディテールな描写が多く、特に大人なってからの話には追加された部分があると監督が語っていたので、ますます9〜12話の展開と結末が気になるところです。
2年ほどぶりに韓国ドラマのレビューと書きたいと思わせて「親愛なるX」。
私はキム・ユジョンさんの熱が入ったり冷淡だったりする演技はもちろん、多くのシーンで見せてくれる泣きそうなキム・ヨンデさんの眼差しに打たれているのですが、皆様は思う見所はどこですか。
11月27日木曜日の夜が楽しみです。
