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「ダイナマイト・キス」やっぱり見なきゃよかった? 最終回を見終わった感想

tamanegi

『ダイナマイト・キス』13話・14話で、ついに最終回を迎えました。

普段はわりと早く寝るほうなんですが、インフルエンザにかかってしまい、数日間ずっと体調が悪くて家でゴロゴロしていたせいか、昼なのか夜なのかも分からなくなっていて。ちょうど2話連続で配信された日も、その日の分をその日のうちに確認しながら観る、という私としては珍しい流れになりました。

みなさんは、どうでしたか。

最終回を観終わって、はっきり感じたことがあります。

このドラマは、韓国ドラマをこれから観始める人なら、一度は観ておいてもいい作品だと思います。

なぜかというと、フックの強さ、展開の早さ、そして韓国ドラマではおなじみのベタ展開が、これでもかというほど詰め込まれているから。正直、かなり軽いし、ツッコミどころも多い。でもその軽さが、ちゃんと2025年仕様にアップデートされた、ある意味最新型のはっちゃめっちゃの「泥沼ドラマ」なんです。

……泥沼なのに、観たほうがいいってどういうこと?

って思いますよね。今から説明します。

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ベタ展開に疲れてたけど、また韓国ドラマに戻る

私がかなり昔に最後に観た韓国ドラマは、たぶん『天国の階段』でした。

第一次韓流ブームの頃で、私が日本に来たばかりの時期で周りでも韓国語を勉強する人が少しずつ増えてきていて、私自身も、たまに韓国ドラマを観ていた頃です。

でも、ある時から急に疲れてしまって。

みなさんも分かりますよね、あの定番すぎるお約束。

主人公が不治の病にかかったり、突然目が見えなくなったり、記憶喪失になったり、死んだはずの人が生き返ったり。

愛し合っていたのに、実は腹違いの兄妹で、どうしても結ばれない運命だったり。

そういう展開が繰り返されるたびに、正直、かなり消耗します。

1話観終わると、泥沼の中を転げ回って出てきたみたいな気分になるのに、それでもなぜか次が気になってやめられない。

……分かりますよね。

そんな感じで20年近く経って、私はまた、ずいぶん様変わりした韓国ドラマの世界に戻ってきました。2022年の冬頃から、少し本格的にドラマを観るようになった気がします。

でも、去年くらいでしょうか。

ちょっとした倦怠期がやってきました。

「最近の韓ドラ、どれも似たような感じで、1〜2か月で1本終わるし、回転は早いけど、あまり記憶に残らないな」

実際、本当にそうで、「何がそんなに良かったんだっけ?」と後から思い出せない作品のほうが多い気がします。1年に100本以上もドラマが作られていれば、そうなるのも無理はないですよね。

そんな中で、『ダイナマイト・キス』に、きれいに引っかかりました。

テンプレートな展開、また出たー

最終回がクリスマスに放送されたこのドラマは、2025年の締めくくりとして語られる一本と言っても大げさではないと思います。もちろん、視聴者の反応を見れば、賛否両論、かなり言われてはいました。

で・す・が。

最後まで観てみて、なぜここまで話題になったのか、ようやく腑に落ちました

監督が「これはもう災害レベルのドーパミンが出るドラマ」と話していた理由にも、妙に納得してしまって。

冒頭から、とにかくベタ展開のオンパレードです。

第1話から、主人公二人の身分差と経済格差を、これでもかと見せてきます。ヒロインはギリギリの生活を送る就活生、男性主人公は多言語を操る有能な財閥御曹司。しかも、愛を信じないタイプ。

そんな二人が偶然出会い、同じ状況をまったく違う解釈で受け取ったことから誤解が生まれます。

ヒロインは、彼が崖から飛び降りようとしていると思って助けようとし、男性主人公は、ただ自分に酔ってテンションが上がってて叫んでいただけ。でも彼女のこれまでの経験や置かれてきた状況を考えると、それが「自ら命を絶とうとしている姿」に見えてしまった、というわけです。

正反対の立場から、それぞれの目的のために二人は手を組むことになります。彼は1兆ウォンのディールのために、彼女は270万ウォンのために。

そして、愛を信じない超ビジネス思考の男性主人公が、彼女とのキスをきっかけに、あっさり恋に落ちてしまう。

しかも、韓国ドラマあるあるの「16話構成ならキスは中盤」という暗黙のルールを完全に無視して、第1話のラストでいきなりキス。韓ドラ全体ではそこまで多くないですが、チャン・ギヨン作品ではたまに見かける展開だったりします。

Screenshot

ここで、もう花火は完全に打ち上がっています。

正直、第1話を観た時点で、結末はだいたい想像がつく。それでも観てしまう。その引力が、このドラマにはあります。

第2話では、その引力があまりにも強くて、二人とも大混乱。「え、こんなに早く?」と思っていると、現実がヒロインを叩き落とします。

生き別れになり、彼女は生活に追われ、彼は彼女を探し回って苦しむ。正直、バカバカしくて、軽くて、かなり幼稚。でもこのドラマ、コメディに本気なので、なぜか観続けてしまうんです。

「これ、どうやって14話まで引っ張るつもりなんだろう?」

と思っていたら、第3話。

劇的に再会したと思った瞬間、ヒロインが既婚者だという設定が飛び出します

視聴者は分かっているんですよね。既婚者じゃないって。そのモヤモヤとした、地獄みたいな感情を、9話で真実が明かされるまで、ずっと見せられます。

問題なのは、男性主人公だけが知らないこと。周りの人たちはみんな知っているのに、彼にだけ情報が届かない。「既婚者を好きになってしまった」という思いに、一人で押し潰されていきます。

同じチームで毎日顔を合わせなきゃいけないのに、感情は制御不能。ヒロインはヒロインで、次々トラブルに巻き込まれます。視聴者は分かっているけど、男性主人公視点で見ると完全にアウトな場面も多くて、下手したら不倫に見える状況が続く。

そうこうしているうちに、ドラマで考えうる限りのベタ展開が、漏れなく全部降ってきます。水に落ち、火事に遭い、闇金に追われて誘拐され、働きすぎて倒れ、雨の山中で行方不明。毎週一度は命の危機。

そのたびに王子様のように現れる男性主人公。避けられない偶然のスキンシップはお約束。偽の夫であるサブ男はそれを見て嫉妬爆発。それを本物の夫だと思い込んでいる男性主人公も嫉妬爆発。視聴者の頭の中も大混乱です。

最後まで来て、ようやく完成する世界観

二人が気持ちを確かめ合って付き合い始めても、ベタ展開は止まりません。

ヒロインは実は既婚者ではなく、偽装就職だったことを男性主人公にだけ明かし、成果を出したら辞めるつもりだったのに、腹違いの姉の陰謀に巻き込まれ、会社の機密を売ったという濡れ衣を着せられます。彼を守るために会社を去り、ついには別れまで選ぶ。

最終回直前で別れるの?と思ったら、男性主人公は婚約者がいながら不倫をしたという噂で立場が危うくなり、腹違いの姉は裏切りが発覚し、その最中に男性主人公が車にひかれる。

最終回で車に引かれるの!?

予告を見て絶句した視聴者、多かったと思います。

「まあ、事故くらい、なんとかなる」と思ったら、記憶喪失までセットで来る。

最終回で記憶喪失って、どういう着地をする気なの…?と。

でも、残り20分ほどで、ちゃんと記憶は戻ります。結果、結婚して、子どもまで生まれて、きっちり閉じたハッピーエンド。

そして記憶喪失はキスで記憶を思い出させるための大事な仕掛けだったので、無理すぎると思っていたけどすっかり「納得」。

Screenshot

とにかく1話の中で、会社奪還、交通事故、記憶回復、そして子どもたちがいる夫婦エンディングまで。

14話で、全部やり切ります。

もう本当に、息つく暇もないスピード感です。

だからこそ比べてしまったドラマ、そして俳優たち

このドラマを観ながら、ずっと思い出していた作品があります。

それが『涙の女王』。

あれもフックは強くて、最初はすごく面白かった。でも次第にベタ展開が増えていって、最後には「この話、どこに着地するつもり?」という疑問だけが残った印象でした。

結末も、正直あまり納得できなくて、主人公は亡くなり、個人的にはかなり虚しい終わり方だったなと感じています。同じベタ展開でも、途中から完全にスリラー寄りの執着メロに変質してしまって、「もう一度観たい」とは思えない作品になってしまいました。

その点で比べると、『ダイナマイト・キス』は真逆。どれだけベタでも、最後はちゃんと明るく、きれいに閉じたハッピーエンドを見せてくれます

だから「また観てもいいかも」と思えます。

キャスティングが本当にハマっていたのも印象的でした。特に意外な一面をたくさん見せてくれたのがチャン・ギヨンさん。

これまで、語学堪能でシャープ、恋人に優しくてセクシー、都会的な外見らしき性格役はたくさん見てきましたが、こんなふうに情けなくジタバタして、感情をむき出しにする姿はほとんど見たことがなかったです。

だからこそ新鮮で、「こんな役も似合うんだ」と思えたんですよね。外見からは見えなかった、少年っぽさや人間味が一段引き出された感じ。

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監督も、彼のそういう少年っぽさがこの役にぴったりだと感じてキャスティングしたと話していましたし。さらにキム・ムジュンさんも、傷を抱えながら子どもを育てる成熟したパパの役を、これまではあまり見たことのない本人の繊細で優しい雰囲気で丁寧に演じていて、とても良かったです。

脇役の皆さんもそれぞれの役割にとても似合う雰囲気でメインの話に適度に絡み合いながら存在してて、大きくは見せてないけどちょっとしたラブラインがあったりとちょいちょい笑うポイントや見てる人が飽きないポイントになってくれていたのもよかったです。

最終回の記憶喪失については意見が分かれるところですが、私はむしろ、すべての始まりがあのキスだったからこそ、必要な選択だったのかもしれないと思いました。すべてを忘れても、もう一度思い出させるほどの「ダイナマイトなキス」。それを象徴的に描くための装置だったのかもしれません。

もちろん、車にひかれる展開は「それはさすがに…」と思いますけどね。

でも全体を通して見ると、監督がこういうベタ展開を楽しみながら使っている感じもして、どこか遊び心を感じました。

結果的に、これだけありきたりの展開を浴びせられても、「もう無理」で終わるのではなく、「またこれ?笑」と言いながら、なぜか最後まで観てしまう。そんな不思議な感覚が残るドラマでした。

特にエンディングで、キャストたちが踊りながら「今年は“ついキスしてしまう”一年になりますように」と言ったとき、ああ、これがこのドラマの世界観なんだな、と妙に納得してしまってました。

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結局、何度も観てしまいそうなドラマ「ダイナマイト・キス」

正直、私はこのドラマ、また最初から観直そうと思っています。

文句が出る展開なのは間違いない。それでもおすすめしたくなる理由が、ちゃんとありました。

これだけベタなのに、観終わって残るのが「腹が立つ」じゃなくて、「くだらないのに、また観ちゃう」という感覚だから。

そもそも監督が一番気にしているのはどこかしっちゃかめっちゃかな人生だけど人に助けられ誰かを愛する話かもしれません。

気分が落ちているとき、恋愛も仕事も全部どうでもよくなったとき。

ビールを一本開けて、お菓子をつまみながら、ソファでゴロゴロ観るのにちょうどいいドラマです。

チャン・ギヨン演じるコン・ジヒョクとアンウンジンさんが演じるダリムと一緒に焦って、情けなくなって、ジタバタすればいい。

人生なんて、そんなに大層なものじゃないですよね。

お金があっても、明日どうなるか分からなくても、人は人に振り回されながら生きて、うまくいったり、いかなかったり。

本当に欲しいものがあるなら、一度くらい思い切って踏み出してみる。

完璧じゃなくても、生きている限り、意味は自分で作っていける。

そんなことを、軽やかに思わせてくれるドラマでした。

というわけで、この連休、ついついまた観てしまいそうなドラマが「ダイナマイト・キス」。

一話を見てしまったらハマり過ぎてやっぱり見なきゃ良かったって言っちゃうかもです。

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プロフィール
たまねぎ
たまねぎ
長年韓国を離れて暮らしているため、韓国エンタメには興味ゼロだった韓国人。日本人の友達に勧められみた「愛の不時着」からその魅力に気付き、偶然見つけた「ウ・ヨンウ」と「Run On」で本格的に韓ドラにハマってしまった韓ドラひよこ組。

情報源は韓国メディアと芸能界に詳しい従姉妹。気になる俳優がいるとその人の作品をマラソンするのが得意。素敵な俳優も作品も多過ぎて誰かに紹介したくなってきたので、ブログを始める。

好きな人、作品、音楽を、形に捉われず、韓国で生まれ育ったからこそ読み取れるセリフや文化の裏側を伝え、リアルな感想を紹介して行きたい。

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