『かかし』11話 12話 最終回 ネタバレ感想|再審の結末とドラマが残したもの
『かかし』11話、そして最終回となる12話まで見終えました。
最後の2話は、30年間時間が止まっていた事件の真相が明らかになりました。
同時に、このドラマが最後に何を描きたかったのかが、いちばん強く伝わってくる回でもありました。
再審によってもう一度動き出す過去。
真犯人の自白によって明らかになる事件の全体像。
そして、罪を犯した人たちがそれぞれどう向き合うのか。
見ていて胸がすく場面もありましたが、それ以上に、あまりにも長い時間を奪われてしまった人たちの人生を思うと、簡単に「よかった」とは言えない苦しさも残りました。
実際に50~60人以上の関連被害者がいるこの事件。
この記事では、『かかし』11話と最終回12話の内容を振り返りながら、イム・ソクマンの再審、そしてラストに描かれた“本来ならあったはずの日常”について、ネタバレありで感想を書いていきます。
『かかし』11話 ネタバレ感想 | 真犯人の自白で揺らぐ 2019年
先週の予告を見た時、私はてっきり、スニョンが父親のいないお腹の子を育てるために、自分の意思でチャ検事の家に入ることを決めたのだと思っていました。
でも今回の放送で、あまりにも非人間的で、衝撃的な事実が明らかになりました。
スニョンの命と引き換えに封じられた真実
スニョンは、お腹の子の父親であるギボムが、彼に拷問を加えた警察とチャ検事が同じ側にいること、いや、むしろチャ・シヨン検事が指示して拷問させたのだということを知っていたんですよね。
そして父の家でチャ検事を「君の兄さんだ」と紹介されると、家の外へ出ていきます。
けれどそこで、何者かに車でひかれてしまい、彼女は意識不明の状態に陥ってしまいます。
おそらく、チャ検事側の人間の仕業だったのでしょう。
子どもは助かりましたが、まだ妊娠7か月の、あまりにも小さな未熟児。
そしてスニョン自身も、今すぐ手術をしなければ命が危ない状態。
チャ検事の父の助けがなければ、その命は助からないかも知れない。その状況を前にして、チャ・シヨンはテジュを連れていき、彼の口を封じたのです。
事件のすべてを知っていて、しかも正義感に燃えていたテジュは、彼らにとって時限爆弾のような存在。
スニョンの命を救う代わりに、テジュは二度とスニョンに会わない、と約束します。
そして、失踪したヘジンの事件についても忘れ、そのまま村を離れて生きることになったようです。
証拠品だけはきちんと保管しておいてほしいという言葉を残して。
30年後、再審が過去をもう一度動かす
今回の11話からは、多くの場面が2019年の現在へと移っていきました。
30年前、あれほどおぞましい事件を覆い隠した人たちは、それぞれの道を歩いていました。
チャ・シヨン検事は、大統領候補にまで上りつめた国会議員に。
彼の後ろ盾となっていた飲み屋のオーナーは、不動産や土地を所有する大物に。
そして、真実を知っていながらも、自分の母親を守るために結局チャ・シヨン側についた末っ子刑事デホは、検事になっていました。
約束どおり、テジュはその後スニョンとは連絡を絶っていたようです。
そして、何も言わずに突然事件を諦めて去っていったテジュに、「行かないで」と言っていた記者、シウォンとも30年間連絡を取らずに過ごしていたようでした。
「どうしてこんなふうに行ってしまうのか」「なぜ何も言ってくれないのか」と問いかけるあの場面で流れていた歌。あれは、シウォンを演じたクァク・ソニョンさんが直接歌ったものだそうです。
だからなのか、余計に切なく感じました。
30年が過ぎ、テジュは有名な犯罪者プロファイラー、そして教授として活動していました。
そんな彼は、イム・ソクマンが20年間も無実の罪で服役していたことをギファンから知らされ、彼のもとを訪れて膝をつきます。
イム・ソクマンは無期懲役の判決を受けていましたが、20年が過ぎて出所し、電子足輪をつけたまま、厳しい肉体労働をしながら生計を立てていました。
テジュは、彼に再審を受けようと提案します。
最後の2話は、この再審が物語の中心になっていくように感じました。
彼が再審を受けるためには証人が必要。
そして裁判でイ・ヨンウ、つまりギファンが真実をすべて話してしまえば、失踪したヘジンの遺体遺棄事件まで明らかになることになります。
自分を訪ねてきたテジュと会い、イム・ソクマンが無実だと知ったチャ・シヨン議員は、それを阻止するために、裏で検事となったデホを使って動き始めます。
一方、ニュースで「真犯人が現れた」と知ったソ・シウォンは、その真犯人の身元を見て凍りつきます。自分の昔の友人であるギファンが、真犯人だったなんて…。
そしてスニョンもまた、30年ぶりにテジュを訪ねます。
その理由は、ギボムの息子であるヨンボムのことでした。
事故でスニョンが病院に入院しているあいだ、生まれたばかりの頃からヨンボムを世話してきたチャ・シヨン検事は、ヨンボムにとって父親のような叔父。ヨンボムは彼を慕っていました。
記者になったヨンボムは、偶然、叔父の事務所でカン・テジュと出会い、嬉しそうな反応を見せます。それは、彼がテジュを尊敬するプロファイラーとして知っていたから。
けれど、カンソン連続事件の真犯人が明らかになり、記者としてその事件を担当することになったヨンボムは、第7の事件の犯人として無実の罪を着せられたイム・ソクマンを訪ねます。
そこで、自分の父が交通事故で亡くなったのではなく、拷問によって命を落としたのだという事実を知ることになるギボム。さらに彼は、その警察官が「カン某刑事」という人物だったと書かれた新聞記事も目にします。
「本当はどういうことなのか」と、スニョンに問い詰めるヨンボム。
けれどスニョンは、ヨンボムが父親のように慕ってきた叔父チャ・シヨンこそが、彼の実の父を拷問させて死に追いやった張本人なのだとは、とても言うことができませんでした。
だからこそ、30年ぶりにテジュを訪ね、申し訳ないけれど、ギボムを拷問したのはシヨンではなく、テジュだったことにしてほしいと頼みます。そしてテジュは、その頼みを受け入れます。
ヨンボムはその事実を知り、テジュの悪事を暴いてやろうと心に決めたように見えました。
『かかし』12話 最終回 ネタバレ感想 | 再審の結末とドラマが残したもの
イ・ギファンを法廷に立たせること自体は、犯罪プロファイラーであるテジュにとって、もしかするとそこまで難しいことではなかったのかもしれません。
すでに公訴時効が過ぎてしまった事件で、もう処罰されることはない。
そのことを分かっているからこそ、「自分はこれだけの犯罪を犯した」と自慢したいのではないか、そんなふうに検事はギファンを刺激します。
自分の言葉を信じてもらえないと感じたギファンは、自ら法廷に立って証人になると言い出します。
人々の前で自分の犯行を明かすことで、何かしらの満足感を得たかったのでしょうか。
でも彼が法廷に立つ前、関連する刑事たちが皆、イム・ソクマンを拷問した事実を否認する中、テジュだけは、自分が誤った検査結果を使ったことでこのような結果を招いたのだと、皆の前で謝罪します。
実際の事件でもDNAが一致する真犯人がいるとわかると、有名プロファイラーたちを総動員し、うまく伝手を使いながら彼の自白を引き出したということです。複数のプロファイラーが力を合わせたことで30年間未解決だった事件の真相を明らかにすることが可能だったということですよね。
第1話の人物が、再審を動かす証人に
そして意外にも、重要な証人として登場し、「合理的な疑い」を認めさせるきっかけになったのが、第1話に登場したイ・ソンジンでした。
このドラマは本当に、小さな要素も見逃してはいけない作品だなと思いました。
最初は何でもないように見える場面が、あとになって重要な仕掛けとして使われることが本当に多いんですよね。
あの時、ソンジンは拷問を受け、チャ検事の圧力によって「自分がやった」と嘘の自白をし、犯人にされかけました。
でもテジュが現れてその流れを変え、彼は解放されました。
自分の恩人であるテジュのために証人席に立ったソンジンは、自分を拷問した人間たちが誰だったのかを、指で示します。
これまでギボムを死に追いやり、ソクマンを拷問した人たちが、何の罰も受けずにいることがずっともどかしかったので、この場面は本当に少し胸がすく思いでした。
イ・ソンジンはまた、テジュの父ギボムに関する真実をヨンボムに伝える、重要な人物でもあります。
ヨンボムが知ってしまった父の死と叔父の罪
裁判が終わったあと、記者としてソンジンの話を聞きに行ったヨンボムは、テジュが彼にとって恩人であることを知ります。
そして、実際に彼に自白をさせたのが担当検事だったチャ・シヨン、つまり自分の叔父だったという衝撃的な事実を聞かされるのです。
過去の新聞を調べていくうちに、ヨンボムはさらに知ることになります。
当時の事件で表彰を受けていたのが、自分の二人の叔父たち、そして今回ソンジンが拷問した刑事として名指しした三人だったということを。
それにしても、ヨンボムがソ・シウォンの運営するオンラインニュースで記者として働いていたとは…。
そして、過去に自分の友人の一人だったギファンに会いにいくシウォン。
シウォンはギファンに「ギボムが警察に連れて行かれた時、なぜ黙っていたのか」と問いかけます。
ギファンは、自分の犯罪のせいでギボムが濡れ衣を着せられ、拷問を受けて死んだという事実に対して、ほんの少しの罪悪感も感じていないように見えました。
自分が犯人だとわかっていたからギボムは釈放されると思った、そう言い訳をします。
実際は、ギファンは体が弱っているギボムをすぐに病院に連れて行かず、彼が何か分かっていると気づくと、彼を置いて車を離れますよね。
やはり、こういう人間だからこそ、あれほど恐ろしい犯罪を犯せたのでしょうか。
とにかくシウォンは、検察側が世論のざわめきを無視できないようにするため、自分のニュース番組にギファンとテジュを一緒に出演させます。
これはギファンがイム・ソクマンの再審で証人として立てるようにするため。
ところがそこで、テジュが突然、予定外の行動に出ます。
ニュースの中で、ヘジンの遺体を遺棄したのは三人の刑事とチャ・シヨン国会議員だと話してしまうのです。
ネット上で、何の制限もなくそのニュースが流れたことで、関係者たちはもう逃げ道がなくなってしまいます。
特に、自分の教え子がそんなふうに遺棄されていたことを知ったスニョンは、もう耐えきれず、シヨンのもとへ行って問い詰めます。
そしてその場に現れたヨンボム。
スニョンはヨンボムと一緒にギボムの納骨堂を訪れ、過去に何があったのか、すべてをヨンボムに話します。
そこでヨンボムは、テジュが自分の母方の叔父であると聞かされます。
自分を父親のように育ててくれた叔父への愛情があったヨンボムは、シヨンに泣きながら訴えます。
「過去のことはもういい。自分は叔父さんのことが大好きだ。だから、自分の過ちを認めてほしい」
彼が涙を流しながら必死に頼む姿を見て、私もシヨンがどうか心を変えてくれたらと、心から願ってしまいました。
裁判の証人として出席したシヨンに会ったテジュもまた、シヨンに手を差し伸べます。
「一緒に罪を償うのはどうか。そんなに怖かったのだと分かっていたら、自分がずっとそばにいてあげたのに」
でも、残念すぎることに、シヨンは変われない人でした。
確かに、、、今まで一度も変わったことがなかった人でもありましたね。
このドラマの中で、彼はずっと一貫して利己的な態度を取り続けていました。
結局、彼は自分の過ちを認めず、ヨンボムは、彼との縁を切ることになったように見えます。
法廷で明らかになった真実と無罪判決
その後、実際の事件でもそうだったように、イム・ソクマンが犯人にされた第7の事件の証人として、イ・ギファンが法廷に立ちます。
実際の事件でも、公訴時効が過ぎたこの事件について「自分がやった」と語ったイ・チュンジェの証言に、どれほど信憑性があるのかが大きな争点になりました。
それは、一人の人間が有罪なのか無罪なのかを判断する、とても重要な材料だったからです。
そして最終的に、公開されたこともなく、実際に現場にいた人間でなければ知りえないような、現場の空間や状況、細かな記憶を犯人が絵に描いて供述したことで、イ・チュンジェが真犯人であり、ユン・ソンヨさんが無実だったことが証明されました。
最初にイ・チュンジェが、自分が連続事件を起こしたと自白した時、警察はユン・ソンヨさんが関わった事件だけは除いて自白した、と説明していました。
でも、結局それも明らかになったわけです。
実際に事件の全容が明らかになったあと、警察は90度に頭を下げ、何度もお詫び申し上げますと言って、ユン・ソンヨさんに謝罪したそうです。
ドラマの中で、裁判で無罪を言い渡されるイム・ソクマンの姿が映った時、本当に胸がすくような気持ちになりました。
でも同時に、あまりにも悔しくて、やりきれない気持ちにもなりました。
ギファンは、自分のすべての犯行を自白し、イム・ソクマンが無罪を言い渡される上でも大きな役割を果たしました。
彼は、自分がやったことに対して、どこか誇らしささえ感じているように見えます。
しかし、「俺たちがやったんだ」というような言葉に対して、テジュははっきりと言います。
「間違っても、自分が正しいことをしたなんて思うな。このすべての悲劇の始まりは、お前だったんだから」
奪われたはずの日常と、ドラマが残したもの
ドラマの最後には、本来ならありえたかもしれない、テジュの周りの人たちの日常が描かれます。
これはテジュが見た夢でした。
ヨンボムの1歳の誕生日を祝うギボムとスニョン。
そこに集まる町の人たち。
テジュ、シウォン、ギボム、そしてシヨンまで。
こうした日常を、数えきれないほど多くの人たちから奪っていったギファン。
いつか自分がしたことを本当に悔いる日が来るのでしょうか。
このドラマで、連続犯罪を起こしたギファンはたしかに重要な人物でした。
でも、それ以上に物語の中心にあったのは、彼の犯行によって壊されてしまった人々の関係や人生、そして社会の不条理だったように思います。
最終話には、特に印象に残る場面がたくさんありました。
証人として出廷する前の、テジュとシヨンの会話。
真実を明かしてほしいと涙で訴えるヨンボム。
事件が終わったあと、最後に面会するテジュとギファン。
「過去には出来なかったけど、今回は私があなたを守る」と言って、テジュにいうシウォン。
そして事件が終わったあと、腹を割って話すシウォンとテジュ。
本当に、演技力のある俳優たちだからこそ成立する場面が多かったです。
正直に言うと、『かかし』というドラマについて、最初はそこまで期待していませんでした。
その当時はまだ真犯人が明らかになっていない状態でしたが、すでに映画化されたこともある事件でしたし、今は結末を知っている事件だとわかっていました。
だから、これでいったい何を描くのだろう。
展開としても、そこまで大きなものはないのではないかと思っていました。
でも、違いました。
本当におぞましい事件を、こうしてドラマとして振り返ることで、この事件に関わった人たちが犯した不正や、誰かの人生を根こそぎ変えてしまった決断が、最初は小さなところから始まっていたのだということを、改めて考えさせられました。
実際には、とても向き合いにくく、重くて不快さもあるテーマです。
だからこそ、ドラマという形になったことで、多くの人がこの事件をもう一度振り返るきっかけになったのは、よかったのかもしれないと思いました。
このドラマがいつからU-NEXTで無料で配信されるのかは分かりません。
5年前に企画されたこのドラマ。
脚本を書いた作家のイ・ジヒョンさんも、半年は監督に脚本を書くことを断り続けていたそうです。
暗い雰囲気で実話だったということもあり、制作をしても配信が可能かどうかもわからない状態で、結局スリラーとしての内容を少し加えることで配信枠を得ることができたんだとか。
こうやって実際の事件をもとにしながら、とてもよく書かれた脚本と、俳優たちの熱量ある演技で描いた作品が気になる方には、ぜひおすすめしたいドラマです。
(*制作関連の話は朝鮮日報の2026.05.27.のインタビュー記事を参照しています)
